Ingmar Bergman の訃報
楽しみにしているイギリス犯罪ドラマを見ようとTVをつけたら、イングマール・ベイルマンの『野いちご』に差し替わっていました。
この日、2007年7月30日の朝、現在スウェーデン人でもっとも知名度が高い映画監督、演出家である Ingmar Bergman が亡くなったとのこと。 89歳。 奇しくも数週間前、このブログでベイルマン監督作品の『野いちご』をご紹介したばかり。 余談ですが、先日ご紹介したヴァランダー警部シリーズの Henning Mankell はベイルマンの娘と結婚しています。 ベイルマンの映画は、難解と取られがちですが、世界中で受け入れられるのは、やはり普遍的な芸術性を持っているからでしょう。 スウェーデン的なものと、独自の芸術性、そして普遍的なものを併せ持った演出家。 スウェーデンはもとより、どこの国でも、彼の作品のテレビ放送があるかと思いますので、ベイルマンの映画に通じる機会があるかもしれません。 |
クルト・ヴァランダー警部シリーズ by Henning Mankell
スウェーデン南端、スコーネの南東に位置する町、Ystad (イースタ)は中世の街並みが残る小さな港町。 観光客で賑わう町でもありますが、Ystad をもっとも有名にしているのは、この人、イースタ警察の警部ヴァランダー。
と言っても、実際の人物ではなく、小説の中の主人公。 スウェーデンはもとより、世界各国でベストセラーの推理小説、ヘニング・マンケル (Henning Mankell) による、クルト・ヴァランダー (Kurt Wallander) 警部シリーズは、日本語訳も何冊も刊行されています。
ヴァランダーは中年の中堅警部。 オペラ愛好家。 私生活ではだらしない面もありますが、仕事に向ける情熱は深く、昔気質のスウェーデン人。 でも最近、こんな片田舎で起こる凶悪事件に戸惑いも隠せません。
実際、これほどドラマチックではなくても、スウェーデンの犯罪率は上がる一方で、凶悪犯罪も増えています。 人々が持つスウェーデンの安全神話を、覆す作品かも。
首都や都市部のあくせくした雑踏の中ではなく、南部の田舎町だからこそ、浮き彫りにされる残虐性や、はっきり見えてくる問題、そして人間らしさがあります。
犯罪の舞台は、スウェーデンに止まらず、国境を越え、国際的な問題を含んでいる場合が多く、奥が深い。
落ち着いた語り、でもスリルに満ちた、そして深く重苦しい内容が多いですが、もちろんユーモアも忘れていません。 作者は、事件を追うことだけを目的とせず、その過程の状況説明から登場人物の心理描写まで、しっかり書いています。 だから、心を打たれる場面も多く、読み終わっても胸の奥に、何かが残る。 どれも読み応えのある作品です。
ヘニング・マンケルは作家としての経歴も長く、児童文学、戯曲、エイズ撲滅のための著書など数多く執筆していますが、刑事ヴァランダーは1997年にシリーズ1作目が登場して以来、毎年新作が発表され、そのたびに大ヒット。 TVドラマや映画も、数多く製作されています。 ロケ地はもちろん、Ystad。 ![]() 原作や映画での、ヴァランダーの足跡をたどるマップが、観光案内所に置いてありますよ。 |
野いちご Smultronstallet (スウェーデン映画)
スウェーデンの巨匠イングマール・ベイルマン (Ingmar Bergman)、1957年の作品。 死の影に怯える老境に入った教授が、名誉博士授与の式典に、ストックホルムからルンドまでの道のりを車で向います。 (約10時間はかかるかなぁ。 昔のことだし。)
その途中、子供の頃彼が住んでいた所、野いちごを摘んだ場所に立ち寄り、初恋に思いを馳せ、次々湧き出る過去の記憶に心を傾け、現実の道中には予想外の道連れが同乗し・・・ この映画のあらすじや賞賛は、至るところで見聞きする名作。 ところで、この映画のスウェーデン語の原題は、Smultronstället。 Smultron (スムルトロン)とは、「野いちご」。 Ställe (ステェーレ)とは、「場所」の意味。 しかし、Smultronstället で「お気に入りの場所」という意味になるのです。 それも、「誰にも知られたくない、自分だけの、ちょっとした秘密の場所」というニュアンスを持っています。 スムルトンは、野に生る小さなかわいらしい苺。 素朴ながら香りも味わいも高く、スウェーデン人はスムルトンが大好き。 そんな野いちごが生る場所を見つけたら、自分だけの秘密の場所にしておきたいですよね。 例えば、 ![]() こんな風に。 ![]() スウェーデン語の観光ガイドでも、"Smultronstället" という表記を目にします。 その場合、野いちごが摘める場所ではなく、その土地の観光名所。 ちょっとした他愛ない場所だけど、きっとあなたのお気に入りになりますよ、というスポット。 他の外国語に訳せないスウェーデン語なので、邦題は『野いちご』、英語タイトルも "Wild Strawberries" のようですが、原題には、実際老教授が野いちごを摘んだ場所だけでなく、その場所が、或いは追憶が、この長い道中が、彼にとってかけがいのない "Smultronstället" だという、二重の意味があるのです。 |




















