長くつ下のピッピとジブリアニメ
デンマークがアンデルセンなら、フィンランドがムーミン&トーベ・ヤンソンなら、スウェーデンはアストリッド・リンドグレーンとピッピでしょう。
(それぞれの国で世界的に知られる人物をあげてみると・・・ 奇しくも、大人も子供も魅了する本の執筆者、あるいはキャラクターですね。) 先日スウェーデンの国営放送で、リンドグレーン生誕100年にちなみ『長くつ下のピッピ (Pippi Långstrump) 』に関する特番を放映していました(製作は2005年の再放送でしたが)。 1945年にスウェーデンで最初のピッピが出版されて以来、世界の国々で翻訳され、世界中の女の子の憧れとなっている、世界で一番強い女の子。ピッピ。
番組内で、スタジオジブリの高畑勲監督へのインタビューもありましたが、宮崎駿氏と高畑勲氏が日本でのピッピのアニメ製作許可を求め、スウェーデンまでリンドグレーンに会いに行ったけれど、にべもなく断られたというのは、有名な話。 (1960代終わりか70年代初めのこと。) リンドグレーンは、実写映像化の許可は出していたもの(リンドグレーン作品は多く映像化されています)、アニメ化に対しては、誰であろうと、どこの有名スタジオであろうと、ノーと言い続け、承諾しませんでした。
それが、なぜか突然、90年代にカナダとドイツ合作によるアニメ化を許可。 これが酷い作品で、悪名高いのなんの!
なんでリンドグレーンは、これを許可したの・・・ と、人々は腑に落ちないどころか、嘆き悲しみます。 番組内でも、ピッピに関する論文で博士を取った研究家は目むいて悲観にくれるし、ピッピと哲学について執筆しているノルウェーの哲学者は「自分の子供が暴力的な番組やポルノを見ていても気にしないが、アニメのピッピなんて見ていたら張り倒す!」とまで言うし。 特にジブリアニメの国際的な評価が定まっている現在、宮崎駿らの手でアニメ化されなかったのは、本当に悔やんでも悔やみきれないようで、そう切々と訴える人達にスウェーデンで何人も会いました。 (私に言われても、どうしょうもないのですが・・・) リンドグレーンは昔の人だし、アニメのことなど何も知らず、アーティストでもなかったので、芸術の質など無頓着だったのかな、って気がします。 でも日本でアニメ化されてたのと、されてなかったのでは、日本での人気も、まったく違ったでしょうね。 ムーミンと比べてみても。 世界的には、ムーミンよりピッピの方が知名度が高いようですが、日本では圧倒的にムーミンですよね。 それはアニメの影響が大きいと(最初のムーミンアニメ世代は)思います。 最近、『となりのトトロ』のスウェーデン語版DVDが発売され、義母は早速購入したとのこと。 私たちが持っていた日本語版(英語字幕付き)のDVDを最初に観てから、すっかりこのアニメに魅了されてしまった義母。 ムーミン大好きなお兄さんにも観せたところ、やはりハマってしまいました。 それから二人は、ちょくちょくトトロのDVDが観たくなり、ただいまも貸し出し中。 「でもこれから、いちいち借りなくても、好きなときに好きなだけ観れるわぁ」とご満悦の様子です。
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アストリッド・リンドグレーン Astrid Lindgren
今年2007年は、スウェーデンの児童文学作家アストリッド・リンドグレーン生誕100年ですが、彼女が亡くなり5年目でもあります。 (1907年11月14日生まれ。 2002年1月28日没)
アストリッド・リンドグレーン没後、2002年に、スウェーデン政府主催による「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞 (Litteraturpriset till Astrid Lindgrens minne)」が設けられ、昨日(5月30日)、その式典が執り行われました。 今年の受賞者は、ベネズエラの Banco del Libro。 2005年に日本の荒井良二氏が受賞したのは、記憶に新しいところでしょうか。
この本は、アストリッド・リンドグレーンという作家の評伝です。 読みやすいうえに、内容がしっかりしていて、お勧め。 子供たちの日常を元気に描いたお話から、子供と死をモチーフにした壮大なファンタジーまで、大人も子供も惹きつける作品を数多く世界に出した彼女。 彼女の描く子供たちは、皆自立し、自我を持っていますが、それは彼女の生き方を反映しているように思います。 地元で就職した新聞社の上司との間に子供ができたものの、彼のプロポーズを断り、未婚のまま出産。 スモーランドの小さな田舎町では大スキャンダルだからか、(デンマークの首都)コペンハーゲンで出産しています。 その後、生まれた子供は自分が養育できるようになるまで里子に出し、自分はストックホルムに働きに出て、別の男性と結婚することになります。 こんなエピソードから、彼女は、自立し強い自我を持ったスウェーデン女性の先駆者だったという印象を受けますね。 |
「やかまし村」はスウェーデンに現存!
「彼女が住んでいるところは、まさにやかまし村の子どもたち / リンドグレーン、大塚 勇三 他、そのままのなのよ!」
そう私に目を輝かせ話してくれたのは私の友人。 「彼女」とは、友人の親しい知人であるスウェーデン人女性で、今年生誕100周年をむかえるアストリッド・リンドグレーンと同郷、スモーランド Småland に住んでいるBさん。 その友人が日本から遊びに来て、私は友人と一緒にBさんを訪れることになり、素晴らしい自然と共に、素晴らしいBさんの人柄にも触れることになりましたが、その詳細は私のメインブログ『スウェーデンの四季』で。 上の本の表紙と下の写真、見比べて見てください。 (これは遠く離れた近所の風景ですが、Bさんのお家はもっとステキで、まさに表紙の絵そのもの。) ![]() リンドグレーン作品集 やかまし村シリーズ 3冊セット / アストリッド リンドグレーンは、スモーランドの田舎に住む子供たちの何気ない日常を描いたもの。 しかしリンドグレーンの筆にかかると、そんな毎日がユーモアたっぷり、愛しいほど輝きます。 75歳になるBさんも、元気でユーモアがあり、滞在中はリンドグレーンの世界にいるような感じを覚えました。 友人はBさんに、『やかまし村の子供たち』のことを伝えたかったのですが、原題が分からず。 本屋に行って探したところ、スウェーデン語では "Alla vi barn i Bullerbbn" です。 追記 RENEさんのブログ『ハンドメイドなひととき』に、在日スウェーデン大使館でリンドグレーンの生誕100年を記念した「スウェーデン児童文学フェア」が行われたという記事があります。 |
Maria Gripe マリア・グリーペの訃報
昨日(2007年4月5日)、ニュースを見ていると、Maria Gripe の訃報が流れました。 マリア・グリーペは、スウェーデンの児童文学作家。 1923年7月25日生まれ。 54年のデビュー以来、38作品を発表し、29ヶ国語に訳されています。 国内外での賞も数多く受賞し、アンデルセン賞(74年)、アストレッド・リンドグレーン賞(72年)を受けています。
日本で有名な作品は 『夜のパパ』 (Nattpappan 68年)でしょうか。 長く絶版になっていたものが、2004年に復刊されました。
スウェーデン国内における彼女の人気と影響力は大きく、多くの子供たちが彼女の作品と共に育っています。 学校の読書感想の課題図書に指定されたり、夏休みの間、子供たち用にラジオで彼女の作品の朗読があったり。 映画やテレビドラマに、映像化された作品もあります。 後期の作品では、「幽霊」のようなものが出てきますが、彼女の作風は、ファンタジーではなく、リアリティーが強いものです。 子供にとっては、ちょっと怖くても、心のなかにしっくり収る。 大人が読んでも、しっかりした読後感を持てる。 雰囲気やムード作りの上手い作家。 彼女の夫、Harald Gripe はアーティストであり、Maria Gripe の作品の挿絵を多く手がけています。 手元に画像がないのですが、彼の絵が、すっごくいい! ちょっとユーモラスな、スウェーデンの古き良き時代を感じるイラスト。 (しかし夫によると、”Josefin”, ”Hugo” がキャラクターの作品は良いが、 ”Elvis” になると「社会民主党」色のスウェーデン社会になっちゃうんだそうです・・・) これからスウェーデンの書店では、彼女の作品が回顧として並ぶかと思います。 |
ニルスのふしぎな旅 (アニメ)&ニルスの故郷
「ニルスって、ペットのハムスターも一緒に小さくなって、旅するんだよねー」と夫に言うと、怪訝な顔。 「ハムスターなんて、出てこないよ」。 ええっ〜!?
ニルスの相棒ハムスターのキャロットは、日本製アニメのみに登場するキャラクター。 そして私は、『ニルスのふしぎな旅』を原作ではなく、アニメで知った世代。 確かNHKで80年代に放映していたと。 でも内容を全然覚えていないので、あまり見てなかったのかな。 ハムスターが出てくるのは、覚えているのですが・・・
ところで私は、スウェーデンで、アニメ『ニルスのふしぎな旅』のDVDを見つけました! でもテレビ版ではなく、劇場版。 全編スウェーデン語。 ちょっと気になったけど、買わずに、でもやっぱり気になって、次にお店に行ったときはもう置いてなかった・・・ 日本のDVDの値段を見たら、ますます買っておけば良かったと、後悔。 スウェーデン語版のアニメでは、ニルスはスコーネ弁を喋っているのであろうか?
『ニルスのふしぎな旅』の主人公、ニルス少年は、スウェーデン南端のスコーネ地方の農家で、ガチョウ番をしていました。 このスコーネ地方は、デンマークに近く、平らな地形で農業が盛ん。 自然や伝統など、他のスウェーデン地域と異なる部分が多くあり、言葉も、スコンスカ(スコーネ弁)と呼ばれる、ひどく訛ったスウェーデン語を喋ります。 原作者のセルマ・ラーゲルレーフ(Selma Lagerlöf)は、一時このスコーネ地方に住んでいました。 また、ニルスの家と呼ばれる、100年以上も経つ古い農家がありましたが、なんと去年、放火にあって全焼してしまった! 今年はニルス生誕100周年。 何かイベントなどやっていないかと、ニルスの故郷(Skurupという町)に行ってみましたが、とっても小さな町で、土曜の午後でお店も図書館も閉まっていました。 ![]() 唯一、手に入ったニルス商品は、この「ニルス・ホルガーソンのお茶」。 町から離れた田舎のカフェで製造されているものが、ツーリストオフィスで販売されていたので、購入。 甘い香りのするフルーツティで、味も良く、気に入っています。(残りがもう少ない。) ニルス生誕100周年を記念して、製造販売したものらしいです。 ![]() 袋の裏には、「Skurup の町は、ニスル・ホルガーソン(1906―2006)を祝います」と書いてあるステッカーが貼ってありましたが、何もしてないじゃなーい! まぁ、スウェーデン(人)だから、しょうがないか。 |
ニルスのふしぎな旅 by セルマ・ラーゲルレーフ
今年、2006年は、ニルス生誕100周年。 つまり、『ニルスのふしぎな旅』が、スウェーデンの女流ノーベル賞作家、セルマ・ラーゲルレーフ(Selma Lagerlöf 1858--1940)により書かれ、出版され、100年です。
スウェーデン語の原題は、Nils Holgerssons underbara resa genom Sverige (ニルス・ホルガーソンの不思議なスウェーデン旅行)。 スウェーデン南端のスコーネ地方に住むニルスは、動物に悪さばかりする悪戯坊主。 そのゆえ、魔法の力で小さくされ、野生のガンの群れと共に、スウェーデン北端のラップランド地方まで旅するはめに。 ニルスは鳥の背中からスウェーデンの国土を見、スコーネに戻ってきます。 セルマ・ラーゲルレーフは、小学生がスウェーデンの地理を学ぶ為の物語を、という要請を受け、この本を執筆しました。
それならば、スウェーデン人の誰もが、この本を読んだことあるのね!? と、夫に聞いてみると、「うーん、学校の教科書に抜粋されて載っていた箇所を、ちょっと読んだだけ」。 義母に聞いてみると、「うーん、学校の教科書に抜粋されて載っていた箇所を、ちょっと読んだくらいかしら」。 (義父はドイツ人なので、読んだことがない。) スウェーデン人なのに、『ニルスのふしぎな旅』を読破した人は、少ないよう。 それもそのはず、図書館で原書を手に取り、びっくり。 600ページもあるのです! 辞書並みの厚さ!! しかも100年前のスウェーデン語って、大人が読んでも難しいでしょう。 なので、子供向けに物語を短くしたもの、美しい挿絵の絵本など、色々なヴァージョンが出版されています。 他言語にも多く訳され、下の写真の絵本は、ドイツ語版。
セルマ・ラーゲルレーフは、偉大なスウェーデン人作家で、現在彼女の肖像は、20SEK(スウェーデン・クローネ 約300円)紙幣に使われています。 ![]() その裏側の絵柄は、ガチョウと共に空を飛ぶニルスです。 ![]() 彼女の他の作品は、大人を読者としたもので、暗くシリアスなものが多いですが、想像力に富み、スウェーデンの美しい自然、人間の持つ悲しさ、ちょっとしたユーモアなど、読んでいて胸を打たれます。 特に感情表現が苦手な昔のスウェーデン人の、抑えられ、でも滲み出てくる感情が、あますとこなく描かれ、素晴らしいものです。 そんな彼女の『ニルスのふしぎな旅』、実は私も読んだことがありません。 この機会に、ぜひ手に取りたいと思います。
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